王子様はカリスマホスト
ちょうど家の裏手。
背丈ほどの塀との隙間は狭く、1階の窓枠に足をかけると容易に塀の上へあがることができ、そこから2階のベランダへ上ることができた。
そこからさっき見た歪んだ雨戸の方へ行き、外から手をかけて力を入れると、カタンと音を立て、それはいとも容易く開いたのだった―――。
そっと雨戸をあけ、かぎの掛かっていない窓を開けると俺は中に入った。
どうやらそこは唯菜の部屋らしかった。
ピンクのカーテンや花柄のラグマットが女の子らしい部屋を演出していたが、今はそれもどこか寂しげな部屋に映る。
家の中は真っ暗で静かだったが、俺はなるべく音を立てないようそっと歩き、その部屋を出た。
唯菜がこの家の中にいるとすれば、物音を立てればどこかへ隠れるか、逃げてしまうかもしれないと思ったからだ。
足音を立てないよう階段を降り、耳を澄ます。
その時―――どこかから、嗚咽が聞こえてきた。
―――唯菜。
俺は、それが聞こえてきた方へと歩き出した。
リビングの中はものが片付けられ、とても寒々としていた。
そしてその中。
布張りのソファーの上で膝を抱えて、泣いている唯菜がいた。
体を小刻みに震わせ、小さくなっている唯菜は、俺がいることには気づいていなかった。
「―――何をやってるんだよ、お前は」
俺の声に、ゆっくりと顔を上げる唯菜。
頬には幾筋もの涙の跡。
その瞳にはまだ涙がにじみ、うさぎのように真っ赤だった。
「―――帰るぞ」
そう言った俺に、唯菜は首を振った。
背丈ほどの塀との隙間は狭く、1階の窓枠に足をかけると容易に塀の上へあがることができ、そこから2階のベランダへ上ることができた。
そこからさっき見た歪んだ雨戸の方へ行き、外から手をかけて力を入れると、カタンと音を立て、それはいとも容易く開いたのだった―――。
そっと雨戸をあけ、かぎの掛かっていない窓を開けると俺は中に入った。
どうやらそこは唯菜の部屋らしかった。
ピンクのカーテンや花柄のラグマットが女の子らしい部屋を演出していたが、今はそれもどこか寂しげな部屋に映る。
家の中は真っ暗で静かだったが、俺はなるべく音を立てないようそっと歩き、その部屋を出た。
唯菜がこの家の中にいるとすれば、物音を立てればどこかへ隠れるか、逃げてしまうかもしれないと思ったからだ。
足音を立てないよう階段を降り、耳を澄ます。
その時―――どこかから、嗚咽が聞こえてきた。
―――唯菜。
俺は、それが聞こえてきた方へと歩き出した。
リビングの中はものが片付けられ、とても寒々としていた。
そしてその中。
布張りのソファーの上で膝を抱えて、泣いている唯菜がいた。
体を小刻みに震わせ、小さくなっている唯菜は、俺がいることには気づいていなかった。
「―――何をやってるんだよ、お前は」
俺の声に、ゆっくりと顔を上げる唯菜。
頬には幾筋もの涙の跡。
その瞳にはまだ涙がにじみ、うさぎのように真っ赤だった。
「―――帰るぞ」
そう言った俺に、唯菜は首を振った。