王子様はカリスマホスト
「え、大学、行くの?」

思わず驚いてそう聞き返すと、凛斗お兄ちゃんはむっと顔をしかめた。

「お前な―――。俺が単なるホストだと思ってんのか」

「ご、ごめん。だってお兄ちゃんが大学行くとこ、見たことなかったから・・・・・」

「これでもれっきとした大学生だよ」

「そ、そうなんだ・・・・・。でも、そんなたまにしか行かなくて大丈夫なの?」

「これでも優秀なもんでね。成績的には問題ない」

「へえ。でも、出席日数とかは?」

「それも、いろいろ裏技があるし、協力してくれる人間もいるから」

「協力?」

「ああ」

そこで、お兄ちゃんはちらりと時計を見上げると立ち上がり、持っていたコーヒーカップを口にするとぐいと飲み干した。

「じゃ、行ってくる。今日、親父ずっと出てると思うけど―――バイト、遅刻すんなよ」

「あ、うん。行ってらっしゃい」

「ああ。お前も遅刻すんなよ」

それだけ言うと、お兄ちゃんはあたしの方を見ることなく玄関へと向かって行ってしまった。

相変わらず、冷たい態度。

でも、それでも一応あたしのことを気にとめてくれているのが解る。

それだけでも、わかるようになったことが嬉しかった。

「うん、がんばろ」

そしてあたしは、制服に着替えに自分の部屋へ向かったのだった・・・・・。

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