王子様はカリスマホスト
「なんだ、凛斗の知り合い?」

そう言ったのは、拓未さんだった。

お兄ちゃんはそれには答えようとせず、あたしの方へと歩いてきた。

「お前、学校は?」

「あの、今日は午後の授業がなくて―――」

「で?なんか用事があって来たのか?」

「えーと・・・・・」

どうしよう。なにも思いつかないよ。

用もなく、ただ大学が見たくて来た、なんて言ったら怒られそうな気がした。

ちらりと琴乃を見ると、琴乃もおろおろとあさっての方向を見ている。

もともと、勢いで行動する子だから、こんな時の言い訳なんか考えてるはずもなく・・・・・。

「唯菜?」

「あの」

えーい、こうなったら本当のことを言ってしまえ、と口を開きかけた時。

「あー、俺の妹に頼まれたんだって」

「は?」

お兄ちゃんが拓未さんの方を見る。

「俺の妹が、彼女たちと同じクラスでさ、その妹に俺へこれ渡しに行ってくれって頼まれたんだって」

そう言って、拓未さんは持っていたバッグの中から、どこかの文房具店らしいロゴの入ったA4ノートくらいの大きさの袋を出して見せた。

「―――何で唯菜に」

「あ、あの、琴乃とお兄ちゃんの大学の話してたの!そ、そしたら絵梨花が、自分のお兄ちゃんが行ってる大学だって言って―――」

「―――ふーん?」
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