王子様はカリスマホスト
驚いて後ずさるあたしを、面白そうに眺めるお兄ちゃん。

「ん?昨日の続き、したいのかと思って」

「な、何言って―――っていうか、なんで濡れて―――お風呂場は1階じゃ―――」

しっとりと濡れたその髪は、なんだかお兄ちゃんをさらにセクシーに見せていて、傍にいるだけでドキドキしてしまう。

「あー、2階にもあんだよ。こっちはシャワーだけだけどな。俺が帰ってくんのはだいたい5時過ぎだから、親父起こしちゃ悪いだろ」

その言葉に、『そうか』と納得して―――

「いつもこんな時間に、バイトってどんな―――」

「お前には関係ない」

ぴしゃりと、低い声で遮られる。

それまでのにやにやとした笑みが消え、突然冷ややかな瞳に変わった気がして、あたしはびくりと体を震わせた。

「―――おれはこれから寝るから、絶対に俺の部屋には近づくな。いいな」

「―――」

あたしは何も言うことができず、ただこくこくと頷いた。

「2階にも、来るな。こっから先はお前には入られたくない」

冷たく言い放つとくるりと向きを変え歩き出し、奥の部屋の扉を開けて中に入ってしまった。

ぱたんと閉じられる扉。

暗い廊下に取り残されたあたしは、しばしそこから動くことができなかった―――。

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