王子様はカリスマホスト
納得していないことがありありとわかるようなお兄ちゃんの表情。

「絵梨花のやつ、今日は部活あるから彼女に押し付けたんだろ。ごめんね、えーと・・・・」

「あ・・・・・崎本唯菜です」

「唯菜ちゃん、ね。よろしく。そっちは?」

「矢吹琴乃でーす!」

「よろしく、琴乃ちゃん」

にっこりと微笑む拓未さん。

お兄ちゃんとは全然雰囲気が違うけれど、この人も大したイケメンだわ、とあたしは思った。

「それにしても知らなかったな、凛斗にこんな可愛い妹がいたなんて」

拓未さんの言葉に、あたしは慌てて手を振った。

「あ、違います、妹じゃなくて、従兄弟なんです」

「―――前に話しただろうが」

お兄ちゃんの言葉に、拓未さんが「ああ」と手をたたく。

「そういやそんなこと言ってたね。そっか、君が・・・・・大変だったね」

その言葉に、思わずびくりと体が震える。

―――知ってるんだ、拓未さん・・・・・

お兄ちゃんが、ちらりと拓未さんを見る。

「―――おい」

「え?―――ああ・・・・・ごめんね、無神経なこと言って」

すまなそうに言う拓未さんに、あたしははっとする。

「あ、いえ、いいんです。気にしないでください」

きっと、拓未さんとお兄ちゃんは仲がいいんだろう。

仲のいい友達に、自分の親戚のことを話したって何の不思議もない。

拓未さんが知っていたのは自然なことだ。

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