王子様はカリスマホスト
“コンコン”

ドアをノックする音に、目を覚ます。

いつの間にか眠っていた。

外を見ると、もうすっかり日が暮れていて。

「唯菜ちゃん、夕ご飯にするから出てきてくれないか」

「あ―――はい」

叔父さんの声に返事をして、あたしは起き上がり―――

つーっと、何かが頬を伝うのを感じて、掌で頬を押さえた。

―――涙?

慌てて机の上に置いてあった鏡を手に取り、目の前に持って来てみると目は赤く、微かに腫れぼったくなっていた。

「―――やだ、これじゃ叔父さんに変に思われるよ・・・・・」

夢を見て泣いてた、なんて言ったら叔父さんに心配をかけてしまう。

―――顔、洗えば直るかな。

そう思い、部屋を出て洗面所に行く。

ばしゃばしゃと冷たい水で顔を洗うと、ちょっとすっきりする。

鏡でもう一度顔を見て―――

「少しは、ましかな」

そう言った時。

「何がましだって?顔洗ったくらいで元々の顔は治んねえぞ」

後ろから現れたお兄ちゃんに目を見開き―――

「う、うるさいな!そんなんじゃない!急に現れないでよ!」

と言って、あたしはリビングへと向かったのだった。

そんなあたしの後ろ姿を、お兄ちゃんがじっと見つめていたことなど知る由もなく―――
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