王子様はカリスマホスト
「何って―――あ、そうだこれ。叔父さんに頼まれて」

あたしは、叔父さんから預かって来た紙袋をお兄ちゃんに渡した。

「―――親父から頼まれた?お前が?」

「ていうか―――叔父さん、お風呂入っちゃってたし、そのまま外でたら風邪ひくと思ってあたしが―――」

そう言いかけた時だった。

「余計なことすんな」

ぴしゃりと、鋭い口調で言葉を遮られ、あたしはびくっと体を震わせた。

「ここは、お前みたいなガキが来るところじゃない。もう二度と来るな」

そう言ったかと思うと、くるりと踵を返し、店の中に入ってしまうお兄ちゃん。

「ちょっと―――」

追いかけようとしたあたしの前で、扉はバタンと音を立てて閉められてしまった―――。


「―――何よ、あれ!せっかく持ってきたのに―――一言、ありがとうくらい言ったって罰は当たんないっつーの!」

頭に来た!

あたしは勢いに任せ回廊を駆け上がり―――

そのまま肩で風を切りながら家まで帰ったのだった。



そのあたしの後ろを、20メートルほど離れて、1つの影がずっとついて来ていたこと。

あたしが家に入ると、影はそのまま来た道を帰って行ったことには、もちろん気づいていなかった・・・・・。


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