王子様はカリスマホスト
「お帰り、唯菜ちゃん。大丈夫だったかい?」

家に入ると、叔父さんが心配そうに玄関まで出てきた。

「あ、ただいま。どうしたの?叔父さん。そんなに慌てて」

「いや、あの辺あんまり夜は治安のいいとこじゃないから心配で―――。やっぱり夜は1人で外に出ない方がいい。悪かったね、僕のせいで」

「そんなこと―――あたしが行きたかったんだから、気にしないで。あ、それよりも叔父さんに聞きたいことがあるんだけど」

「僕に?なんだい?」

あたしはリビングに戻ると、叔父さんの入れてくれた紅茶を飲みながら、あることをきいてみた。

「あのホストクラブって、『ヴァンパイアハウス』っていうんだよね?それってもしかして―――」

「ああ、気付いたかい?あのホストクラブのコンセプトが、『吸血鬼の館』でね、ホストは全員牙をつけ、黒いスーツに黒いマント着用が義務付けられてるんだ」

「へえ・・・・・お客さんって普通の女の人?」

あたしの言葉に、叔父さんはちょっと苦笑して。

「まあ、わりと普通だよ。血を吸われたいからっていう変わり種もたまにはいるみたいだけど。でも、だいたいはそのスタイルが好きで、自分のお気に入りのヴァンパイアを見つけようっていうのが多いらしいよ」

まあ、確かに。

黒いマントを翻す凛斗お兄ちゃんはすごくかっこよかったけど―――。

そこで、あたしはまたさっきのお兄ちゃんの態度を思い出してむっとする。

「なんであんなに性格悪くなっちゃったんだろ」

ぼそっと言った言葉は、叔父さんにははっきり聞こえなかったみたいで。

「ん?何か言ったかい?」

「あ、ううん、別に―――。あ、あたしお風呂入っちゃうね」

そう言って席を立つあたしを、叔父さんが不思議そうに見ていた・・・・・。
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