王子様はカリスマホスト
「な―――何で、あたしの部屋に―――!?」

あたしの言葉に、その男は悪びれもせず、頭をかいた。

「え、ここあんたの部屋?そりゃ悪かったね。いつも俺が使わせてもらってた部屋だったから―――。そういやなんか家具が増えてるなあと思ったんだ」

「いつも―――?」

「ああ。あ、ベッド、使わせてもらったから」

にっこりと、何でもないことのように言われて。

―――何ですと!?

呆気にとられていると、男はにやりと笑い、あたしを眺めた。

「ふーん。あんた、凛斗さんのいとこなんだって?にしても全然似てねえよなあ。どっちかっていうと凛斗さんの親父さんに似てるか」

―――なんか、言い方に棘があるんですけど。

「それで結構!あたし叔父さんが好きだもん!とにかく、そこどいてよ。ここはあたしの部屋なんだから、もう勝手に入らないで!」

「こえーなあ。わかったよ」

そう言って男が部屋から出た時―――

「千尋?お前何してんだ」

階段の方から声が聞こえ―――

見ると、シャワーを浴びた後らしいお兄ちゃんが、タオルを首にかけた状態で降りて来た。

「あ、凛斗さん」

「2階の部屋を使えって言っといただろ?」

「すいません、ついいつもの癖で―――」

千尋、と呼ばれた男が頭をかく。

なんだか、ずいぶん殊勝な態度だ。

あたしに対するのとは全然違う。

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