王子様はカリスマホスト
「レストランは、うまくいかなかったんだ。立地条件も悪くてね。従業員も、すぐにやめてしまって―――。結局、借金だけを残して店は3年前に畳むことになってしまって」

「そうだったんだ―――」

全然、知らなかった。

パパもママも、そういえば叔父さんのレストランの話はほとんどしてくれたことがない。

聞いても、『よくわからない』と言われるだけで―――。

「その借金を返すのに、普通の仕事ではとてもじゃないけど間に合わなくて。それに、仕事もなくてね。それで、その時にお世話になった会社の会長さんがとてもいい人で、ホストクラブのオーナーをやってみないかと声をかけてくれたんだよ」

「それで、こっちに戻って来たの?」

「うん。凛斗もこっちの大学に通いたいと言っていたし、それなら横浜でホストクラブをやる予定があるから、オーナーをやってくれないかって。もちろん雇われオーナーだからね、そんなに儲かるわけじゃないけど、ホストクラブを5年間は潰さないという約束で、借金をすべて肩代わりしてもらったんだよ」

「5年―――。今年で何年目?」

「3年目だよ。あと3年―――今のところぎりぎり黒字ではやっていけてるんだ」

そう言って微笑む叔父さんに、あたしはちょっとほっとした。

「あの―――あたしで何かできることある?ウェイトレスとか」

「ありがとう。でもホストクラブだからね、女の子は雇わないんだよ」

「あ、そっか」

でも。

そんな状態なのにあたしが居候なんかしていたら―――。

そう思っていると、叔父さんはちょっと慌てたようにあたしを見た。

「唯菜ちゃんが心配することないんだよ。この家も、その会長さんに世話してもらったところで、ホスト達がたまに寝泊まりするのに使うっていうのを条件に、家賃なんかの負担もないんだ」

そっか。だから千尋さんが―――


< 34 / 111 >

この作品をシェア

pagetop