王子様はカリスマホスト
「なんであんたがあやまんの?あの部屋はあんたの部屋でしょ?」

「そうだけど―――でも、千尋さんがずっと使ってたんでしょ?あたしがあの部屋使ってたら、泊る部屋がなくなることがあるかもしれないって。あたしのせいで―――あたし、全然知らなくて、ごめんなさい」

そう言ってもう一度頭を下げ―――

そうして千尋さんの顔を見上げると、千尋さんはちょっと驚いたような顔をしていたけれど、すぐにうれしそうに笑った。

「別に、気にしないでいいのに。あの部屋はもうあんたの部屋なんだし。それに、2階にまだ4部屋もあるんだから、泊れないほど人が泊ることなんて滅多にないよ。もしそうなったら誰かの部屋に一緒に居させてもらうし。凛斗さんとかね」

「でも―――」

「大丈夫だって、気にすんな。あんた―――唯菜ちゃんだっけ。優しいね」

笑顔でそう言われて、何となく照れてしまう。

「べ、別に優しくなんか―――。あたしは、後から居候してるんだし―――本当だったらあの家にはいない人間だから―――」

「ああ―――聞いたよ、両親亡くしたって。大変だね」

千尋さんの言葉に、一瞬空気が変わった気がした。

―――大変?何が?

心臓が、嫌な音を立てていた。

―――パパとママがいないから?

「唯菜ちゃん?」

千尋さんの声が、どこか遠くから聞こえていた。

―――パパとママは―――どこにいるの?

「なあ?どうした?」

千尋さんの指先が、あたしの髪に触れた。

―――パパとママは―――

千尋さんが、心配そうにあたしの顔を覗き込む。

と、その時―――

「何してる?」

上の方から、低い声が聞こえてきた。
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