王子様はカリスマホスト
「毎度ー、配達でーす」

カンカンと降りてくる足音。

あたしとお兄ちゃんはにらみ合ったままで。

「あたしが、千尋さんに話したかったの。話が終わったらすぐに帰る。どうしてお兄ちゃんにそこまで言われなきゃならないの」

「ここは、お前みたいなガキが来るようなところじゃない。どんな理由があったって、そんなものは関係ない。来るなって言ったら来なけりゃいいんだよ」

ますます頭にくる。

一方的にそんなこと言われて、納得できるわけがない。

遊びに来てるわけじゃないのに―――


あたしの横では、配達の人が持っていた木箱を床に置き、伝票を出してる。

千尋さんがその木箱を丁寧に開けると、中に入っていたお酒の瓶らしきものを1つ手に取り、確認していた。

「サインお願いします」

「はーい、ちょっと待って―――」

そう言って千尋さんがその瓶を戻そうとした時だった。

「保護者でもないのに、お兄ちゃんにそんなこと言われる覚えないよ!」

そう言って一歩足を踏み出して。

その瞬間、あたしの足がその木箱に触れた。

その弾みで木箱が微かに動き―――

「あっ」

慌てた千尋さんの手から、瓶が滑り落ち―――


―――カッシャーーーンッ!!!―――


その場の空気が、一瞬にして凍った―――。

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