王子様はカリスマホスト
砕け散った瓶。

床に広がるガラスの破片とピンクの液体。

匂い立つ、アルコールの香―――。

「げ―――ピンドンが―――」

千尋さんの顔色が、さっと蒼くなった。

配達の人も、冷や汗を流している。

「あ、あの、それじゃ僕はこれで―――」

そそくさと配達の人が行ってしまい、残されたあたしたちはみんな固まっていて。

あたしは、おずおずとお兄ちゃんの顔を見た。

その顔は、呆れたように床の液体を見渡していた。

「あの―――ごめんなさい。べ、弁償するから―――」

あたしの言葉に、お兄ちゃんがじろりとあたしを睨む。

「弁償?お前が?どうやって?」

「ど、どうやってって―――お小遣いが―――」

「―――これ、いくらだか知ってて言ってんのか?」

「え―――いくら、なの?」

あたしが、隣にいた千尋さんを見て聞くと、千尋さんは言いずらそうにあたしを見つめ―――

「―――30万」

と言ったのだった。

「―――さんじゅう―――まん―――」

さーっと血の気が引いて行く。

どうしよう。

お小遣いだけじゃ、当然足りない。

どっかでバイトでもして―――

「高校生のバイトで、30万稼ぐのにどんくらいかかる?エンコウでもするつもりかよ」

お兄ちゃんの冷たい言葉にぐっと詰まり―――

あたしは、拳を握りしめた。


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