王子様はカリスマホスト
「なんであんなこと言った?」

帰ろうと、店を出たところで後ろから出て来たお兄ちゃんが言った。

「―――あんなこと?」

「親父はお前の保護者だ。お前のやったことに責任とるくらいのこと、大人だったら当然のことだ。何で無理にここで働くなんて―――」

「無理なんかじゃないよ。働きたいと思ったからそう言ったの。―――叔父さんの負担には、なりたくない」

「だから、負担なんて親父は―――」

お兄ちゃんがそこまで言った時、店の扉が開いて千尋さんが顔を出した。

「あ、いた」

「千尋さん―――」

「もう暗いから、送ってけってオーナーが」

千尋さんの言葉に、お兄ちゃんが口を開く。

「それなら俺が―――」

「いや、凛斗さんはほら、客が来てますよ。看護師の―――」

その言葉にお兄ちゃんは溜め息をつき。

「―――わかった。じゃ、頼む」

「はい。行こうか、唯菜ちゃん」

「あ―――はい」

千尋さんに着いて出て行くあたしの後ろ姿を、お兄ちゃんが見ていたことに、あたしは気付かなかった・・・・・。

「うちで働くの?唯菜ちゃん」

夜の街を歩きながら、千尋さんがあたしを見る。

「うん。あ、だから開店前の掃除とか、明日からあたしがやるので―――千尋さん、やり方教えてくれる?最初だけ」

「喜んで。なんか楽しみだな。やっぱホストって男ばっかだからね。客以外の女の子って貴重だよ」

そう言って笑ってくれる千尋さんに、あたしはホッとしていた。

お兄ちゃんの冷たい反応を見た後だから特に、すごく温かい気持ちになったのだった・・・・・。
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