王子様はカリスマホスト
「なんであたしがこんなかっこ―――」

溜め息をつき、トイレの鏡に映る自分の姿を見つめる。

まるきり、メイドカフェのメイドさんだ。

そりゃあ、ここでバイトしたいって言ったのはあたしだけど。

でも、制服がないからってなんでコスプレ?

めちゃくちゃ男前で大人に見えた一樹さん。

実はすごいオタクだったりして・・・・・。

「―――まあいいや。さっさと仕事しよ」

そう1人呟き、トイレを出る―――と。

ばったりと凛斗お兄ちゃんと顔を合わせてしまった。

―――なんてタイミング悪っ

「おま―――そのかっこなんだよ?」

あきらかに、不機嫌な表情。

「一樹さんが―――制服がないからこれ着てって」

「一樹さん―――会ったのか」

「うん」

「ふーん・・・・・で、その格好で掃除とかするわけ?」

「うん」

「階段も?」

「―――うん」

なんで階段だけ強調するんだろう?

あたしは首を傾げた。

お兄ちゃんはまた不機嫌そうに溜め息をつき―――

「―――わかった」

とだけ言って、行ってしまった。

―――わけわかんない。
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