王子様はカリスマホスト
いくらあたしがあの店でバイトするのが気に入らないからって、あんなふうに言うことないじゃん!

どんだけあたしのこと嫌いなのよ!

あたし、そんなに嫌われるようなことしたっけ?

あの家に、バイト先に、あたしがいることがそんなに気に入らないんだろうか―――。

「ふんだ。いいもん。高校卒業したら、働いて―――あの家出て行くんだから」

叔父さんはいい人だけれど。

甘え過ぎちゃいけない。

そう思ったから―――

黙々と掃き掃除を続け。

いつの間にか全部終わっていた。

「あとは―――テーブルを拭くんだっけ」

あたしは店の扉を開け、中に入った。

まだ開店前なので、客はいない。

ホスト達もまだ控室で着替えたりしていて店内は静かだった。

銀色に輝くテーブルを1つ1つ丁寧に拭いて行く。

「あ、唯菜ちゃん、早いね。すげーきれいじゃん。やっぱ女の子がやると違うよなー」

千尋さんの声に顔を上げる。

「ホント?よかった!汚れてるところがあったら教えてください。開店前に、きれいにしますから」

「うん、大丈夫だよ。ところで営業中は、唯菜ちゃん何してるの?」

「あ、叔父さん―――オーナーのお手伝いすることになってるの。事務仕事とか」

「そっか。何時まで?閉店まではいられないのかな」

「叔父さんと、一緒に帰ることになってるの。叔父さんが来ないときはお兄ちゃんと―――」

「ふーん。じゃ、そんときは俺も凛斗さんちに泊っちゃおうかな」

そう言って、千尋さんがにっこりと笑った。

「え―――」

「千尋、馬鹿なこと言ってないで氷用意しとけ」

いつの間に来たのか、お兄ちゃんが千尋さんの後ろから顔を出して言った。
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