王子様はカリスマホスト
もともと、親類は少なかった。

ママの方の両親はすでに他界していたし、兄弟もなかった。

パパの方の両親も他界していて、兄弟は叔父さんだけ。

だから身内と言えばあたしも含め、3人だけなのだ。

形式的なものを流れに従って済ませ、その後は近くのレストランで昼食を食べたら終わり、ということになっていた。

「唯菜ちゃん、大丈夫かい?やっぱりあんまり顔色が良くないよ」

心配そうな叔父さんに、あたしはちょっと笑って見せた。

「大丈夫、ちょっと寝不足なだけ。帰って寝たらすぐによくなるから、心配しないで」

「そうかい?それならいいけど―――。じゃあ、食べ終わったらさっさと帰ろうか」

「うん」

あたしは素直に頷いて。

早く、今日の日が終わってほしいと、ずっと頭の隅で思っていた。

そんなあたしを、お兄ちゃんがじっと見ていることなど、全く気付かずに―――。



昼食を終えると、すぐに又電車に乗り、帰宅する。

その間も、あたしはほとんど口を開かなかった。

叔父さんに心配はかけたくなかったけれど。

何を話したらいいかわからなくて。

とにかく、早く今日の日が終わってほしかった。


そして。

夕食の席、今日は凛斗お兄ちゃんも揃っての食事となった。

その頃にはようやくいつもの和やかな雰囲気になり、あたしも普通に話すことができるようになりつつあった。

その夕食の途中、叔父さんは、何か思い出したように席を立った。

「唯菜ちゃん、ちょっと渡したいものがあるから―――待ってて」

なんだろう?

あたしは首を傾げ、ちらりとお兄ちゃんの方を見る。

お兄ちゃんは特に気にするふうでもなく。

もくもくと食事を続けていた。
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