王子様はカリスマホスト
やがて戻って来た叔父さんの手には、紙袋が下げられていた。

「これを、渡さなくちゃいけないんだ」

そう言って紙袋を差し出され、あたしは戸惑いながらもそれを受け取った。

「これは―――?」

「携帯電話だよ」

叔父さんの言葉に、あたしは目を見開く。

「携帯電話?どうしてあたしに―――」

「僕が買ったんじゃなくて―――それは、聡介と優子さんから君に」

「―――!!」

一瞬、血の気が引いた気がした。

―――パパと、ママ、から?

「この間―――君の家に行って、いろいろ整理していた時に―――出て来たんだよ。その中にね、2人から君へのメッセージカードが入っている。高校入学のお祝いに―――きっと、内緒で用意していたものなんだろう」

袋を持つ手が、がくがくと震えていた。


『高校に入ったら、携帯電話が欲しいの!』

『必要ないだろう、携帯なんて』

『だって、もうみんな持ってるんだよ!ねえ、パパお願い!』

『そうだなあ。高校に入学したら考えてもいいけど―――』

『ホント?やった!』

『おい、まだ買うと決めたわけじゃないからな。まずは合格しないと』

『わかってる!大丈夫、絶対合格するもん!』

『どっからその自信が湧いてくるんだ』


携帯なんて必要ないって、パパはずっと買ってくれなかった。

高校合格したら、もう一度お願いしよう。

そう思ってたんだ―――。
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