王子様はカリスマホスト
「それから―――これは、今朝電話で聞いたんだけど」

叔父さんの声に、はっと我に返る。

「―――え?」

「あの家の―――買い手が決まったらしい」

その言葉に。

あたしの視界が、ぐらりと揺れた。

「家の―――買い手―――?」

「うん。手続きなんかはこれからだけど、先方がかなり乗り気なので今月中には―――」

「いや!!」

思わず、叫んでいた。

「唯菜ちゃん?」

叔父さんが、驚いてあたしを見る。

だけど止まらなかった。

―――あの家が、あたしの家じゃなくなる?

―――パパとママと3人で、ずっと暮らしてきたあの家が。

―――知らない人の家になるなんて―――

「だめ―――あの家は―――あたしたちの家だよ」

「唯菜ちゃん、でも―――」

「だって、あの家がなくなったら、パパとママの帰るところがなくなっちゃう」

あたしの言葉に、叔父さんの目が見開かれる。

「唯菜ちゃん―――」

「おい―――」

凛斗お兄ちゃんが、席を立つ。

「パパとママが帰ってきたら、またあそこに住むの。3人で―――だから、だめ。あの家は―――あたしたちの家だよ!」

がたんと席を立ち、部屋を飛び出す。

「唯菜ちゃん!!」

叔父さんの声が聞こえたけれど、あたしは止まらなかった。

―――だめ。

―――だめ。

―――あの家は―――

あたしは家を飛び出し、そのまま走り続けた―――。
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