王子様はカリスマホスト
向かった先は、あたしの家―――。

パパと、ママと3人で住んでいた―――。

玄関のカギは閉まっていて。

だけど、その場合の入り方を、あたしは知ってる。

よく、パパもママもいない時、鍵を忘れてしまった時にやっていた方法。

裏手に回り込み、塀伝いに2階のベランダへ上がる。

それからあたしの部屋に面している窓へと回り、雨戸を開ける。

この部屋の雨戸は鍵が壊れているので外からでも簡単に開くのだ。

そして中の窓の鍵も緩くなっていて、外から2,3回がたがたと窓を揺らすと自然に外れてしまう。

そうして、あたしの部屋へと入ることができるのだ―――。

月明かりに照らされたあたしの部屋は、がらんとしていて。

家具や洋服など、すでに叔父さんが向こうの家へ運んでくれているのだから当然なのだけれど。

あたしは窓を閉め、開けっ放しになっていた部屋を出て階下へと降りた。

しんと静まったリビング。

窓からの月明かりでぼんやりと浮かび上がるその部屋の光景は、以前と変わらないものだった。

そう、ここで―――

3人で暮らしていたんだ。

食事をして、テレビを見て、おしゃべりして―――

物心ついたときからずっと。

あたしの家は、ここだった。

リビングのソファーがあたしのお気に入りの場所で。

小さい頃はよくここで寝てしまって、そのあたしをパパが抱き上げて、部屋のベッドまで運んでくれていた。

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