王子様はカリスマホスト
“ピンポーン”

突然なったインターホンの音に、あたしはびくりと体を震わせた。

―――誰?もしかして―――

叔父さんかもしれない。

心配して、探しに来たのかも。

だけど―――あたしは動けなかった。

2回、3回とその音は鳴り続け―――

やがて、また静寂が訪れた。


「寒―――」

もう5月だというのに。

誰もいないこの家は冷え切っていて―――

あたしは、寒さに震えていた。

「パパ・・・・・ママ・・・・・早く帰ってきて―――」

あたしは膝を抱え、顔を埋めるようにして丸くなった。

何も聞こえない。

パパの声も、ママの声も―――

―――どうして?

―――何であたし一人なの?

あんなに元気だったのに。

いつだってあたしを見ててくれたのに―――

「どうして―――いないの―――」

涙が、溢れ出した。

叔父さんに、病院で家のことを聞いた時。

パパとママの夢を見た時。

その時にも涙は出て来たけれど。

その時とは違う。

後から後から溢れ出る涙は、止まることなど知らないように―――

あたしの頬を流れ、服を濡らして。

堪え切れなくなった嗚咽が、部屋に響き渡った―――
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