王子様はカリスマホスト
がたんと、音が鳴った気がした。

それが外から聞こえたのか、家の中からなのか、わからなかった。

でも、家の中のはずない。

だって、ここにはあたししかいない。

ぼんやりと、そんなことを思っていた。

もう、動く気力すらなかった。

涙も枯れ果て、あたしはただじっと、膝を抱えて座っていた。

誰も帰ってこない。

パパも、ママも―――

この家には、あたししかいないんだ。

呼びかけても、答えてくれる人はいない―――

そう思った時だった。


「―――何をやってるんだよ、お前は」

突然降ってきた声に、あたしは顔を上げた。

声の主は、凛斗お兄ちゃん。

暗い部屋の中で、あたしを見下ろしていた。

表情までは見えなかったけれど。

荒い息を整え、何か怒っているように感じた。

「―――帰るぞ」

お兄ちゃんの、抑えた声にあたしは反射的に首を振った。

「おい―――」

「あたしの家は、ここだもん。ここで―――パパとママを、待つの」

小さな声で呟く。

まるで独り言のように。

お兄ちゃんは、しばらくその場から動かず、黙っていたけれど―――

突然あたしの腕を掴んだかと思うと、その腕をグイと引っ張り、あたしを立たせた。
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