王子様はカリスマホスト
その言葉に。

あたしは信じられない思いで目の前の男を見つめた。

「―――凛斗、お兄ちゃん―――?」

そう言うと、男はにやりと笑い―――

ちょっと顔を伏せたかと思うと、目から何かを外した。

「カラコン、してたの気付かなかった?都会っ子のくせに―――そんくらいわかりそうなもんだけどな」

そして再びあたしを見つめたその目は、薄茶の瞳で―――

確かに、面影はあるけれど。

「凛斗、コンタクトしたまま寝てたのか?目に悪いよ」

叔父さんの言葉に、凛斗お兄ちゃんは肩をすくめた。

「寝るつもり、なかったんだ。ついウトウトしちまって―――」

そう言うと、凛斗お兄ちゃんはくるりと向きを変え、歩き出した。

「どこ行くんだ?」

「顔、洗ってくるよ。もうすぐ出る時間だし」

「ああ、そうか―――。夕飯は―――」

「いらねえよ」

そう言って、出て行ってしまった凛斗お兄ちゃんの姿に、あたしはしばし呆然としていた―――。

「悪いね、唯菜ちゃん。てっきり部屋にいると思って・・・・・」

ふと、ソファーを見るとそこにはさっきまで凛斗お兄ちゃんが使っていた毛布がぐちゃぐちゃになって置かれていた。

水色のソファーと同系色の毛布。

ぼーっとしていたせいで、この毛布を認識できなかったんだ・・・・・。
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