王子様はカリスマホスト
『唯菜ちゃんには、僕の仕事しばらくは内緒にしたいんだ』

そう親父が言ったのは、唯菜がうちへ遊びに来たいと言っていたと話していた時だと思う。

『遊びに来ればいいじゃん』

と答えた俺に対して、親父がそう言ったのだ。

子供が俺みたいな不愛想な男1人、ということもあってかとにかく親父は唯菜をかわいがっていた。

唯菜が赤ん坊のころから、とにかく唯菜がいると目尻が下がってデレデレしっぱなしなのだから、わが親父ながら呆れるばかりだ。

その親父が、唯菜にはホストクラブをやっていることを知られたくないという。

うちに来た時に、ホスト達が来たりしたら。

俺と会うことで、怪しまれたりしたら。

そんな危惧があったのかもしれない。

本当は会いたかったけれど。

中学生になった唯菜がどんな女の子になったのか。

きっとかわいくなったんだろうと、楽しみにしていたけれど。

親父の心配症が移ったのか、もし俺がホストをやっていることを知ったら、どんな反応をするんだろう、と心配になって来た。

軽蔑するだろうか。

唯菜に、白い目で見られるのは、俺だって嫌だ。


結局、俺はそれから2年間、唯菜に会うことがなかった・・・・・・。
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