王子様はカリスマホスト
だけど、その後には唯菜にとってつらい現実が待っている。

両親の死。

それを知らせないわけにはいかない。

親父にとっても、辛い仕事だ―――。

その日、俺は家に帰って来てからも眠ることができずにリビングのソファーでぼんやりしていた。

カラーコンタクトを外すことも忘れ、ただじっとしていたのだ。

そこへ、親父からの電話を受けて。

安心して、気が抜けて―――

不覚にも、居眠りしてしまった。

ここ1週間ほど、ろくに眠れなかったから、安心したことで一気に眠気が襲ってきた感じだった。

そして―――

ソファーに置いてあった毛布を頭からかぶるようにして寝ていたところへ、唯菜が近づいて来ていた。

俺は気付かずに、毛布に触れたその気配に、はっとして体を起こし―――

『きゃあああーーーーー!!』

気づけば、唯菜が目を瞑り、その場にしゃがみこんでいた。

そりゃあ、ここに連れてくるとは聞いていたけど。

びっくりしたのはこっちの方だ。

そこまで怯えられるのは、心外ってもんだろう。

『王子様』

そう呼ばれたのは昔のことだけれど―――。

思わずむっとしたとしても、それは仕方のないところだと、思うのだけれど・・・・・。
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