王子様はカリスマホスト
もともと、その話はしていたはずだ。

あの家は売ることになると。

だが、その話を進めようとする親父に、唯菜は―――

『いや!!』

顔は青白く、目は見開かれていた。

普通じゃない。

そう思ったけれど。

止めることはできなかった。

『だって、あの家がなくなったら、パパとママの帰るところがなくなっちゃう』

その言葉に、親父もことの重大さに気付いた。

「おい―――」

ガタガタと体を震わせる唯菜に声をかけた、その瞬間。

『パパとママが帰ってきたら、またあそこに住むの。3人で―――だから、だめ。あの家は―――あたしたちの家だよ!』

そう叫んだかと思うと、唯菜は部屋を飛び出して行ってしまった。

「唯菜ちゃん!!」

慌ててそのあとを追いかけようとする親父を、俺は片手で制する。

「親父は、ここにいてくれ」

「しかし―――」

「あいつが帰ってきたとき、だれかいないと困るだろ?俺が行くから―――。何かあったら連絡する」

「―――わかった。頼んだよ、凛斗」

親父の言葉に頷くと、俺は唯菜のあとを追って部屋を飛び出した。

玄関の戸が閉まる音。

俺は、急いであとを追った―――。
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