トリップ
姫香「あの~‥」
男「はい。何か?」
姫香「隣‥空いてますか?」
男は隣の席をチラッと見て、姫香に視線を戻す。
男「空いてますよ、どうぞ。」
コレが私と亮太が初めて出会って、初めて交わした会話!
あの時の亮太そっけなかったなぁ。
で、私は亮太の隣の席に座ったんだ。
映画はホラーだったんだけど、いまいち怖くないの‥
前の席の女の子は彼氏にしがみついて
「キャー」なんて怖がっているけれど‥
なんか‥
姫・男「つまんないなぁ」
え!?!?
私と亮太は顔を見合わせた。
ビックリした反面、なんだか滑稽で、私たちは笑い合った。
でも周りからの痛い視線で映画館だということを思い出し、
私と亮太はまた顔を見合わせ、照れながら一礼をして
スクリーンに視線を戻した。
映画が終わる。
どうしよう‥なんだか今話しかけないと後悔しちゃいそうだな‥
そんなことを考えているうちに映画館には姫香1人だけがたたずんでいて、
そこに亮太の姿はどこにもなかった‥
なんだか運命的な感じがしたのになぁ‥
私は映画がつまらなかったのがなんだか悔しくて
レンタルショップにDVDを借りに行くことにした。
もちろんホラーのコーナーに一直線だ。
なにかおもしろいのないかなぁ‥‥‥
あ、これなんかいいかも!とDVDに手をのばした。
その瞬間
白くて、透き通るような綺麗な手が、姫香の手と重なった。
ハッとその手の主に視線を移す‥
店内の喧騒が消えた気がした。
どこかのコテコテの恋愛ドラマの主題歌が流れた気がした。
そう、
隣にいたのは紛れもなく亮太だった‥
神様‥
これは偶然なのかな?
それとも‥