「「キミに…」」 (梓&由浩)
「拓巳くん!?」
「ぉい拓巳…。」
焦っている真緒の声と、
低い低い雅也先輩の声。
「だってそぅだろ!?
寂しいならいつでも会える奴にしろよ
ヨシはもぅ別世界の奴なんだよ」
「おい拓巳、お前いい加減にしろよ」
雅也先輩の低い声は更に大きな声になった。
「………。
だよね、ありがとう拓巳…」
「梓ちゃん……??」
「ありがとう、大事な事忘れてた。」
「………。」
「でもあたしは別れないよ。
ヒロを待つよ。」
拓巳は少し不貞腐れた顔をしていた。
空気が重かったけど、
せっかくのご馳走にケーキ。
残すなんてもったいない。
「ほら!! みんな食べよう!!」
あたしは他の女の子より
強くないといけないんだ。
ヒロを待てるぐらい
友達を不安にさせないぐらい
あたしは強くないといけないんだ。
それが、
全国の何万に夢を与えているプロ野球選手の、
ヒロの彼女でいられる条件。
きっと――…