「「キミに…」」 (梓&由浩)
「強いな」
雅也先輩があたしに優しく言ってくれた。
「強がりなだけですよ」
「まぁ確かにそぅかもな」
ふっと小さく笑う雅也先輩が
かっこよく見えた。
野球の中継が終わって
番組はいつの間にか
つまらない番組になっていた。
時計の時間は10時15分――…
♪〜〜♪〜♪〜♪〜〜
あたしの携帯から電話の着信音がした。
一瞬ヒロかと思ったけど音が違った。
「はい…」
『先輩?? 秋山です!!』
秋山っていうのは職場の後輩。
いつも明るい彼女が更に明るい。
きっといい事があったんだろう。
『さっき野球の中継観てましたか!?
あたし観戦してて、
松本由浩選手の腕触っちゃいましたぁ〜!!
生の松本選手かっこよすぎですよー!!
あんだけかっこいいと恋しちゃいますよぉ〜♪』
そぅ秋山はヒロのファン。
ヒロはかっこいいから女性ファンが多いの。
「そっか!! あたしも家で観てたよ
かっこいいよね」
『ですよね〜ッッ♪
やっぱり生はいつもよりかっこいいです!!
内野にいたんでめちゃくちゃ近かったです!!』
興奮してる秋山。
「そぅだよね。
今日盗塁したし打率凄いし
かっこよかったよね」
別に秋山が悪いんじゃないよ。
でも嫌なの。
ヒロの事、話さないで……。