「「キミに…」」 (梓&由浩)
松本由浩
ブーブーブーブーブーブー…
「?」
『着信:雅也先輩』
雅也先輩??
何だろう。
「はい」
『よーヨシお前今どこ?』
「今寮の近くの駐車場ッス」
『お前さ……』
「はい?」
『今日何の日か知ってる?』
「………知ってますよ。」
『なら来れるか?』
「今から行きます」
『そっか。 ならよかった』
雅也先輩はその後に
切るぞと言って電話を切った。
その前に聞こえた拓巳の声。
また拓巳が何か言ったのかな。
梓……泣いてないかな…。
泣いてないといいな……。
梓との出会いは、
高校のときだった。
高校は野球で推薦もらって入った。
でも県の端から端へ通学するのは厳しい。
だから寮に入った。
毎日キツい練習の繰り返し。
吐くんじゃないのかって思うほど走った。
バットが持てない程打った。
ぶっ倒れる程練習した。
何度も何十回も何百回も何千回も――…
外野との連携、
セカンドとの話し合い、
キャッチとのピッチャーとの
牽制の練習をした。
『甲子園に出て日本一になるために』