「「キミに…」」 (梓&由浩)
『左中間真っ二つ!!
サードランナー生還!!
松本は2塁!!
松本は今日3打席3安打!!』
初めまして新垣梓といいます。
今、プロ野球の中継を見てます。
テレビからは松本コール。
それもそぅ。
今日の打率は10割。
しかも5打点と得点に絡んでるんだから。
でもあたしは不機嫌。
別に好きな球団が負けてるんじゃない。
松本が嫌いなんじゃない。
むしろ好き、大好きだ。
高校のときから大好きだ。
『松本は盗塁成功!!
さっきのはタイミングがよかったですね』
『そぅですね。
元々足のある選手だったので、
あれはぁ―…刺せないでしょぅ』
「ヨシの奴盗塁しやがった」
「マジで??
今年は盗塁王狙えるんじゃない??」
あたしの隣で中継を観ているのは
高校からの仲の拓巳。
勝手に冷蔵庫の中身を漁っているのは
幼なじみの麻美。
後ろでビールを飲んでいるのは
雅也先輩と真緒。
こんな大人数があたしの部屋、
(しかも七畳一間の部屋)にいる理由は、
「もー!!
梓!! せっかくの誕生日なのに
そんな顔しないの!!」
そぅ、
あたし今日誕生日なんです。
しかも付き合って3年目の記念日。
でも彼氏は来ない。
だって試合中だもん。
あたしの彼氏、松本由浩は……。