「「キミに…」」 (梓&由浩)
松本由浩
「あず――…」
ガバッ!!
「………。」
「梓」って呼ぶ前に
梓は布団を頭からかぶった。
「梓ぁー」
「……」
「あーずーさぁー」
「……」
「あずさぁー俺一応試合後だから
疲れてんだけど;;」
「だったら帰ったらいいじゃん…」
「俺今日寮帰んないし」
「何で!?」
梓が勢いよく布団から出てきて
その隙に腕を掴んだ。
「親に呼ばれたって嘘ついた。
家までの距離考えたら
すぐには帰れないって嘘ついた」
「何で―…」
「………。
じゃないと梓、
………泣くだろ…。」
腕を掴んで逃げられなくなった梓は
じっと俺の顔を見ていた。
今の言葉で梓の目が揺れた。
泣きそうなのは
俺のせいで、
すんげぇ胸が痛くなった。
「――…ッッ///」
久しぶりに抱き締めた梓は、
小さすぎてびっくりした。
「梓…」
「っ……、ック…」
ぎゅーって引っ付く梓を
愛しく感じた。
「ごめん中々会う時間作れなくて…」
『練習』を言い訳にしたくなかった。
「全然いいょ?
ヒロは、…昔から、練習の虫だもん
大丈夫だょ…」
声が優しかった。
自分が酷く思えた。
「なぁ梓、
今度試合に呼ぶから観に来てよ。」
「本当ッッ!!??」
「うん(笑)
今日のまぐれだなんて言わせないから」
「うんッッ!!」