戦国の世に咲いた恋の物語~出会い編~
運命の歯車。
ダダダッ

馬の蹄の音がだんだんと近づいて来るの
が聞こえる。その音を追い掛ける様に聞
こえて来る罵声。

この近辺でも有名な黒い綺麗な毛なみの
暴れ馬に乗り駆けて来るのは巷ではうつ
け者やバカ殿と陰で呼ばれているかの有
名な織田信長様である。
御年23であったと思う。



私は凛。今年誕生日を迎え17になった。
ここ等ではそれなりに大きな商家の長女
として、年をとった両親に代わり、切り
盛りをしている。

毎日同じ日の繰り返し。
変わらない朝、
変わらない仕事、
変わらない買い出し。

何も変わらない、そう、あの時まで私は
そう信じて疑わなかった――



卯月(4月)の昼過ぎののどかな日差し。
少しずつ暖かになり、眠気を誘う季節。
いつもより少しゆっくりとした歩調で家
へ向かっていたときだった。

せっかくの気分が馬の蹄の音と罵声によ
り害されたので少々不機嫌な気持ちにな
ったが、相手が信長様では文句の言いよ
うもなく、とりあえず目立たぬように近
くの路地裏の角で一度止まり、そこで信
長様が過ぎるのを待つ事にした。

ドン。

その時、押されたのか、小さな女の子が
大通りの真ん中に押し出されてしまった。
まだ5~6歳だろうか。びっくりして涙目
になっている。親はどこにいるんだろう?
誰も助けようとしない。
信長様はもうすぐそこまで迫っているの
に。

「そこのガキ!退け!」

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