【短編】 ききたいこと
 
[数Ⅰの教科書、46ページの章題2で、どう式を作ればいいのかわからないんですけど、教えていただけませんか?]


 一気に疑問符まで突っ込んで、送信する。

 先生の優しい性格からして、なんでだろうと首を傾げつつもそこまで聞かれては答えずにはいられないだろう。それが彼の可愛いところだ。

 ―――なんて、年上に言ったら失礼だけれど、それでも先生は許しちゃうのだろう。

 知らない番号からのメールに、携帯をのぞき込みながら眉をひそめつつも、教科書を掴んで一所懸命に説明文を打ってる先生の姿が目に浮かぶ。


「送信完了」


 画面がいつものディスプレイに戻ってようやく、携帯を閉じる。
 両手でそれを挟み持ち、とくになにもない薄汚れた壁を見上げる私。柄にもなく乙女入ってるな。

 
 それから一時間ほど経って―――不意に携帯が震えた。

< 11 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop