【短編】 ききたいこと
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見るとそれは紛れもなく先生からのもので。
とっさに携帯を掴んで開いてみた―――けれど、そこから下へスクロールバーを下げることが出来ない。
もし、怒っている文章だったら。
もし、どうして知っているのかとしか書かれていなかったら。
そう考えると嬉しさより怖さのほうが先に立って、なかなか思うように親指に力が入らなかった。
(―――でも)
でも、せっかく一歩を踏み出したのだ。
こんなところで諦めたら、もったいない!
私は意を決してスクロールバーを動かした。
[こんばんは。驚いたよ。どうして佐々倉が俺の番号を知ってるんだ?]
予想通りの文面に一瞬固まる。
けれど、まだまだ先があるらしく、内容はこれだけではないようだ。
ほっとするやらびくびくするやら、震えが止まらない指先を叱咤して私は先へ進んだ。
[まあいいか。
だけど誰彼なしに教えるのはよしてくれよ]
噴き出した。
いいんだ。
私としては助かったことに変わりないけれど先生、すこしは用心を考えたほうがいいかもしれない。
[章題2は、昨日の授業で教えた公式を使って解くんだ。メールで説明するとこんがらがりそうだったからノートに書いた写メを送るな。見づらかったら言ってくれ。
藤堂]