【短編】 ききたいこと
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人通りの少ない旧校舎三階の図書館は寝るには最適な空間だった。渡り廊下から遠いこともあって利用者もほとんどいないのが当たり前だし。
もっとも、物音や人の声などいくらあっても私の睡眠に支障はないのだけれど、なければないにこしたことはない。
週五、学校が終われば塾に直行の生活が嫌になり、行かなくなって二週間が経つ。
とうとう昨日の夜、母親に大目玉を食らって、深夜二時まで喧嘩して―――へとへとだし眠いしイライラするしで、おかげで今日の授業はさっぱり身に入らなかった。
もちろん、今日も塾はさぼる。
半ば、意地である。
負けたくなった。母親に屈するのが嫌だった。
このままサボり続けて、反抗を続ければ、いつか向こうのほうが先に折れて辞めさせてくれると思った。
だから私はいつものように机に突っ伏して、堂々と、寝た。