【短編】 ききたいこと
[俺からメールしていいものか悩んだんだけど、どうしても気になったから…。
昼休みの話、聞いちゃったんだ。盗み聞きするつもりはなかったんだ。ただその、聞こえてしまったというか。
塾、行ったのか?
電話出なかったってことは、行ったんだよな。
ああいや、俺は別に佐々倉が塾に行ったのか確かめたかったんじゃなくて、その―――]
スクロールバーを下げて―――次の瞬間、私は呼吸が出来なくなった。
画面にぽたりと雫が落ちる。
[だいじょうぶかなと思って]
とめどなく溢れる涙が頬を伝って床に落ちる。
言って欲しいと望んでいた言葉。
それなのに、いざ言われると嬉しい以上に苦しいなんて……予想してなかった。
先生は、優しすぎる。
涙と一緒に、好きがどんどん溢れてくる。
それなのに、こんなに好きなのに、想いを伝えられない歯がゆさが胸を締め付ける。
もどしすぎて、喉の奥が熱いよ、先生…………っ。
私は時計を見上げた。
十時半、ちょっと過ぎ。
なにをしている時間だろう。
もうすぐ試験だからテストを作っている最中かもしれない。
(……)
私は呼吸を整えると、先生の番号を呼びだし、
それでもしばし迷った―――
しかし、私は通話ボタンを押した。