【短編】 ききたいこと
Ⅳ ききたいこと


 コールが続く。

 1…2…3……

 4回目のコールが鳴る手前で、私は電話を切った。
 どうしてかは、簡単なことで―――。

 怖かったから。

 電話をして、先生からだいじょうぶかという声を聞いてしまったら、いっきに脆い自分があふれ出してしまうと思った。
 先生の優しさに甘えて、すがって、頼ってしまったら……

 彼に相応しい女になろうと決めた強い自分が崩れてしまいそうで―――。
 
(―――私は)

 ……私はまだ、だいじょうぶ。

 言い聞かせるように閉じた携帯をきゅっと握りしめる。
 先生にもらったメールがあるから、それだけで私はまだ、だいじょうぶ。

 だいじょうぶ。

 魔法の言葉のように何度も繰り返しているうち、自然と落ち着きが戻ってきた。
 顔を上げて、窓を開ける。

 今日はやけに月が綺麗に見えた。晴天である。明日は寒そうだな。

 ……そうだ。

 私はあることを思い立ち携帯を再び開いた。




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