【短編】 ききたいこと
パシャ―――。
[メールありがとうございました。私なら平気です。
私より、長里先生のほうが大丈夫か心配です。怒ってたら明日の授業あてられそう。
久しぶりの塾で疲れたので、失礼ですが今日はもう休みます。
おやすみなさい、先生]
―――先生。
お月様の写メを添付して、送信。
私は身震い一つ、ベランダに出た。
そして白い息を吐きながらおもう。
もうメールは届いただろうか。
先生は空を見上げているだろうか。
先生も同じ月を見ているだろうか―――と。
きっと、見てるよね。
だって、先生だもの。
先生と私の静かな繋がり。
それだけなのに、こんなにうれしい。
隣にいてくれたら、どんなにいいことだろう。
一緒に同じ空を見上げられたら、どんなに幸せなことだろう。
とそこで、携帯がこの静寂の夜にそぐわないぶぶぶという小汚い音を響かせた。