【短編】 ききたいこと

 普段から塾でも、もちろん学校の試験でも私の上を走っている生徒を超えることは出来なかったけれど、それでもなんとか私は3位を勝ち取った。

 通信簿を母に見せたときの彼女の顔。
 なんぞ恐怖でも見たかのような表情に、思わず噴き出しそうになった。
 写真に撮って、お父さんに見せてあげたかったとすごくそうおもった。

(まあ、なにはともあれ―――)

 母は確かに言った。
 約束はしたと。
 覚えているかと訊いて、頷いた。

 私は、ようやく塾から解放されるのだ。

 破裂寸前の風船のような生活からおさらばできるのだ。

 待ち望んだ自由が訪れる。


 そう思うと胸が弾んで、ついベッドの上で飛び跳ねたくなった。



 母は訊いた。

 このまま通い続ければ次こそは1位をとれるかもしれないのにと。

 私は今回、塾に行かないで3番をもぎ取ったのだ。
 誰に力を借りたわけでもない。
 自分の力で勝ち上がったのだ。

 だから、
 塾に通い続けたところで成績は上がらないだろう。
 もっとも、あんなところで勉強に縛り付けられているほうが成績低下につながると私は思う。

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