【短編】 ききたいこと

 目眩がするほどの時間に追われる日々を、ふらつきながらもとにかくがむしゃらに走り続けて、
 次から次へとやってくる障害物にぶつかってはまたぶつかって、ときにはぶちのめされたりもして……。

 荒んだ心はもはやささくれ状態で、肌も心もかっさかさ。

 ―――だけど、周りが見えなくなるくらい慌ただしい毎日を送っていてもなぜかどこか物足りなくて、
 なにが足りないのかはわからないけれどとにかく胸に開いた穴はどうしても、どうしても埋まらなくて。

 日々を憂いて、嘆いて、頭を抱えているうちにすべてを投げ出したくなって、


 ―――それで私は塾を休みがちになった。 


 なにをしてもなにもしなくてもいつだって打ちのめされた感で一杯で、それなのに―――……ううん違う、だからこそ、助けを求めるのもあきらめて、もうなにもかもが嫌だと首をふっていた。

 そんなとき。

 闇にうずくまる私に光をさしてくれたのが先生という存在だった。

 先生は―――先生がどれほど私に力を与えてくれているのかきっと気づいてはいないけれど、先生は、ありがとうという言葉だけでは足りないほどの立ち上がる力を私にくれた。


 彼という人は、私の憧れの先生であり、尊敬する素晴らしい人物でもあり、同時に、愛おしいかけがえのない男性でもある。

 私は、やっぱり先生が好きだ。藤堂先生のことが、好きで好きでたまらないんだ。


(この喜びを、早く先生に伝えたいな……)


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