【短編】 ききたいこと
これほど息苦しい生活に耐えているのに1ミリも進展できないなら、もういっそ好きなんて気持ちは捨ててしまったほうがいいのではないかとさえ思い始め、半ば自暴自棄になりつつあった頃―――。
私に、転機が訪れた。
放課後、一人教室で委員の仕事をこなしていたときのこと。
不意に背後でドサドサッとなにかが崩れ落ちる音がして振りかえると、案の定床にはノートやら教科書やらのなだらかな山が形成されていた。
頭の中が部活でいっぱいだった運動バカ男子が急ぐあまり無理矢理詰め込んだ結果である。こうなっては元も子もない。
先生と違って私には片付けてあげようという親切心は微塵もないので、さっさと仕事を終わして図書館で寝ようとプリントに向き直った。
―――向き直ろうとしたそのとき。
私の視界にある一枚のプリントが映り込んだ。それも、特別なときに人数分しか配られない上質紙が使用されたプリントである。
そこに、先生の名前を見つけたのだ。