【短編】 ききたいこと

「急に時間が出来たから、まだなにも考えてなくて……。友達はクリスマスにライブに行くとかデートとか言ってましたけど」

 そう言ってふと、先生はクリスマスをどう過ごすのだろうと気になった。

 先生くらい素敵なヒトがモテないわけがない。
 もしかしたら愛しのカノジョさんとどこか綺麗なホテルで食事、とか………………

 自ら展開させた妄想に自分で撃沈する。

 そんな、こと……―――いや、でも、こんなに格好いい人に恋人がいないわけが……


 ああ、まじで涙が出そう。


「みんないいクリスマスだなあ。俺もそのちょっとでいいからあやかりたいくらいだ」
「お仕事、なんですか?」

 訊くと先生は苦笑混じりに頷いた。

「ここ何年とそんな明るいクリスマスは過ごしてないな。仕事が終わったら今年も長里先生と独り身同士飲んでるかもしれない。―――って、あ、いや、別に長里先生がどうというわけじゃないぞ」

 言われてすぐ、私は口もとに手を当てた。
 慌てて訂正する先生にちょっとだけ噴いてしまったのだ。



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