【短編】 ききたいこと
Ⅱ つながるということ
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家に着くと、もはやお決まりとなった母親の説教を延々と聞かされる羽目になった。
もちろん、塾に行っていないせいである。
だが、いくらがみがみ言われようと今の私には右から左、頭の中など別のことで一杯で―――まったく身に落ちてくることはなかった。
しかし、その微動だにせずある一点のみを見つめて正座の状態を続ける姿勢が逆に彼女の怒りの炎を鎮めることとなった。
どうやら母親は私が反省しているものと勘違いしたらしい。
いつもなら軽く2時間は解放してくれないところを今日は30分で「もう部屋に行っていいわよ」と許してくれた。
自室に戻ると、指先にはすでに感覚がなかった。冷たくなって、なにに触れてもいまひとつ触っているという実感がない。
私はカバンを開けた。
無我夢中で荷物をまとめたせいで中身は整っていると呼ぶにはほど遠く、委員の提出物など見事にしわくちゃになっていた。
―――けれど、そんなこと今の私にはどうでもよかった。