恋を知った日



母が帰り、私はクランと話していた。



クランに気になっていた過去のことを聞いても、答えてくれなかった。



「ねぇ、クラン…」



返事がない。



クランのほうを見るとクランは寝ていた。


「悪魔も寝るとかイメージが狂うな」
クスクス笑っていたら



「……アリ…ア…すま…な…い…」



消えそうな声が隣から聞こえた。



私は、静かにクランの頭を撫でた。



「…いつか私が死ぬ前にクランの話、聞かせてね」



静かに囁くと、電気を消して眠りについた。



闇の中で彼が目を開けていたことも気付かずに…



闇の中の悪魔は柚羽の隣に立ち、
彼女の額に手を置き、呟いた。



「そんなに見たいなら…見せてやろう…俺の過去を」



病室に光が広がった。



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