i want,


「垣!」


みどの驚いた声があたしを正気に戻す。
目の前の男の子を、もう一度ちゃんと見た。

中途半端な長さの髪。
何処にでもいる田舎のガキと同じ様な服装に、履き潰した上靴。

ただ周りと違うのは、その小馬鹿にしたような視線。

彼の手があたしに伸びた。驚いて引こうとするが、その手が取ったのはあたしの手にある紙切れで。

「12番、お前じゃーや。はよ座れや」

顎で促し、彼は席に戻っていった。
12番の隣。一番後ろの、特等席。

「…っと…」

正直、困った。

くじを取られてしまったからどうしようもなかったけど、みどの願いを快承した矢先だ。
みどに視線をやると、少しショックを受けた様な表情をしていた。でもすぐに笑って「不正ばれちゃしょうがないかぁ」と言った。

「みど…」
「ほら、はよ席つけぃ」

先生の声があたしの声を遮った。正直、何を言えばいいかわからなかったので助かったと言えば助かった。

「じゃねっ」、みどは笑って自分の引いた席へ向かう。
あたしも少し戸惑いながら、自分の引き当てた『かき』の隣へ行った。

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