i want,


…水族館の売店はやっぱり人気が高くて、特に女子が群がってキーホルダーやらぬいぐるみやらをキャッキャと騒ぎながら物色していた。

ぬいぐるみを買う気で来たさとは(というか、そもそも何でそんなにペンギンに執着しているのかはわからないけど)、その光景を見てげんなりした表情を見せる。

「行かんのん?」
「だって…この熱気はないじゃろぉ」

確かに男子には入り辛い空気だ。

気をきかせて「買ってきちゃげよっか?」と聞いたが、さとは遠慮して頭をふった。

「まぁいいわ。思い出は思い出のままが一番じゃ。アイス食うてこよー」
「あ、俺も行く!」

切り替えの早いことがさとの長所かもしれない。

ベクトルがさっとペンギンからアイスに向いた彼に、卓也と福山が着いて行った。

「あおはー?」
「あたしいいわ。この辺で待っちょく」

近くのベンチに腰掛けながら、さと達を見送った。

ざわつく売店前で、あたしのことを気に止める人なんかいない。

心置きなく鞄からイヤホンを取り出して、音楽を流し始めた。

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