i want,
昨日の今日なのに、いつもと全く変わらない態度。
拍子抜け、とまではいかないものの、なんだか自分の気持ちを持て余してしまっていた。
こんな気持ちなのは、あたしだけなのだろうか。
「ん」
何の前触れもなく、垣枝が何かを差し出した。
視線は前を向いたまま。態度も同じくふてぶてしくて。
「…なん?」
「ええけぇ」
なおも「んっ」と差し出すその紙袋を、あたしは恐る恐る受け取った。
「見ていいん?」
「えぇよ」
窺う様にその口を開けた。
中に見えたのは、ふわふわした黒いかたまり。
「あ…」
そっと取り出した。
さっきさとが悔しがるほど愛でていた彼。
それは、小さなペンギンのぬいぐるみだった。
多分一番小さなサイズ。それはてのひらにちょこんと乗る。