i want,
『引っ越すことになったんよ』
あまりに唐突な真依の一言に、あたしは思わず返す言葉を失った。
『え…?』
『うち、転勤族じゃ?お父さんがね、大阪の本社に移ることになって』
真依は三年生の時に岡山から転校してきた。
洗練された美少女の真依が、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしたことを思い出す。
『ほんとはね、お父さんと残りたいっち言ったんよ。本社勤務が決まったっち言ってもすぐやなくて、三年以内にってことになっちょって。じゃけぇ中学はみんなと同じがいいっち言ったんやけど…どうせすぐ転校しんにゃいけんっち言われて…』
真依は来年小学生になる弟がいる。いずれ大阪に移り住まなければいけないのだから、先に真依達だけが大阪に引っ越すことになったらしい。
その考えは、妥当だと思う。
思うけど。
『…そっか。うん、そうやよね』
言い聞かす様に頷く。
『大阪やよ?凄い都会じゃ!可愛いお店いっぱいあるんじゃろうなぁ』
『あお…』
『ね、いつかあたしが行ったらさ、色々案内してね!博多とどっちが都会じゃろうか。いいなぁ、真依。じゃけぇさ、』
精一杯の笑顔で言った。
泣かない。