i want,


『じゃけぇさ、心配しんで。あたしは大丈夫じゃけ』


…多分真依は、あたしのことを心配していた。

真依がいなかったら、あたしは今以上に1人になる。

誰よりもそれは、真依がわかっていた。


でも、真依に心配をかけたくない。

知らない土地に行って、一番不安なのは真依だ。

だからあたしは泣かない。

絶対泣かない。


『…うん』

泣きそうなのは真依だった。
そんな真依の肩を叩いて、明るく言う。

『それにさ、おじちゃんしばらくこっちなんじゃろ?休みの時とか、帰ってこれるじゃ!』
『…うん。絶対帰ってくる!』
『ねっ!お土産期待しちょるしっ』
『あおはちゃっかりしちょるけぇ』

ようやく真依に笑顔が戻って、あたしは小さく安心した。
と同時に、心を覆う影が侵食しない様にブレーキをかける。
明るく振る舞うことで、それを必死に振り切った。



…真依が、いなくなる。






< 107 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop